生理痛には個人差があり、通常は下腹部や腰痛が出ますが、酷い方になると腹痛・背中の痛み、頭痛も出現し、薬を飲まないと耐えきれない程の痛みが現れる場合があります。
また、発熱、めまい、吐き気、イライラ、不眠などの症状を伴う場合もあり、日常生活にまで支障をきたす場合があります。
現代医学では、日常生活に支障をきたすほどの症状を、「月経困難症」と呼んでいます。
現代医学の生理痛
現代医学では、月経困難症を大きく2つに分けていて、
- 器質性月経困難症(続発性)
- 機能性月経困難症(原発性)
に分類しています。
1.器質性月経困難症(続発性):月経困難症を引き起こす原因となる病気が存在するもので、主にその病気の治療をメインに行います。
2.機能性月経困難症(原発性):原因となる病気が見当たらないもので、主にプロスタグランジンの過剰生産によるものと考えられています。こちらが月経困難症の大半を占めますが、具体的な原因としては
- 子宮の未発達
- ホルモンのアンバランス
- 子宮内膜症・子宮筋腫・卵巣嚢腫など
- 心因性によるもの
などがあります。
現代医学の治療は、鎮痛剤や月経を調節するホルモン療法が一般的で、まれに手術療法を行います。
中医学から診た生理痛(痛経)
中医学では、身体を構成する代表的な要素として、「気」「血」「水」があります。
痛みが出る場合、この3つの要素のどれかが、
- 滞ってしまって痛みが起こる(不通則痛)
- 足りなくなって痛みが起こる(不栄則痛)
かのどちらかです。
今回は女性特有の痛みの生理痛ですので、3つの要素の中でも「血」が中心となって痛みが出現します。
この血が滞ってるのか不足しているのか、その原因は何か、「気」や「水」はどのように関係しているのか?などを確認しながら、治療をしていきます。
① 「不通則痛」(通ぜざれば痛む)
私たちの体は、「気」「血」「水」が滞りなく流れる事で健康を維持しています。
この流れが、ストレスや冷えなど何らかの原因により滞ってしまうと痛みが出現します。
滞った事で起こる痛みの特徴
- 急に発症
- 激痛
- 痛む部位を触ると嫌な感じがする
この痛みのタイプは、「実証」と呼ばれています。
② 「不栄則痛」(栄えざれば痛む)
私たちの体が「気」「血」などが全身を巡る事で栄養されています。
これらが、過度の疲労や食べ物の偏りなど何らかの原因により栄養されなくなったり、運動不足などで隅々まで気血が巡らないと、その部分に痛みが出現します。
栄養不足・巡り不足で起こる痛みの特徴
- 徐々に強くなる
- 激しい痛みではない
- 触ったり揉んだりすると軽減する
このタイプの痛みは、「虚証」と呼ばれています。
生理痛の原因
中医学から診た生理痛の原因は、7つあります。
- ストレス(気滞血瘀)
- 血行障害(瘀血)
- 疲労(気血両虚)
- のぼせ(肝腎不足)
- 水分代謝障害+熱(湿熱)
- 冷え(寒湿)
- 経絡の冷え(衝任虚寒・腎陽虚)
それぞれを、詳しく解説していきます。
生理痛のタイプ
①ストレスタイプ(気滞血瘀)
ストレスにより気の流れが滞り、下腹部の血の運行が障害された事により起きる生理痛です。
- 生理前や整理中に下腹部が痛む
- 痛みよりも張り感が強い
- ストレスで悪化
- 来潮は、スッキリ始まらない
- 脇や胸の張り感がある
- 生理周期は不安定で、早まったり遅くなったりする
改善方法
趣味を満喫したり呼吸法や運動を取り入れて、まずはストレスを流す事が大切です。
また、アロマオイルがお好きな方は柑橘系の香りを嗅ぐとストレス解消に繋がります。
おすすめのツボ
1.気海
おへそから指2本(人差し指と中指)下に取ります。
気の流れを調整し、下腹部の血流を良くします。
痛みを感じる事もあるので、強く押し過ぎないように注意が必要です。
2.血海
膝の皿の上の内側から、指3本分(人差し指〜薬指)上がった所に取ります。
血の流れを調整してくれます。
3.三陰交
脚の内くるぶしから指4本(人差し指〜小指)上にあります。
すねの骨と筋肉の間に取ります。
血の流れを調整する働きがあります。
4.太衝
足の甲にあり、第一指と第二指が交わる所の凹みに取ります。
気の滞りを流す働きがあります。
②血行障害タイプ(瘀血)
冷えや流産、難産などによって、下腹部に血の滞り(瘀血)が出来る事で痛みが生じます。
- 刺すようなズキズキとした痛み
- 痛む場所は決まっている
- 夜間に痛みが強くなる
- 血の色は暗く、血塊が混じる事がある
- 痛みは生理が始まってからが多い
- 生理周期は不安定で、始まると中々終わらない
改善方法
お風呂やカイロなどで下腹部を中心に身体を温めるようにしてください。
また、運動などをして血の流れをスムーズにさせる事も大切です。
おすすめのツボ
1.帰来
おへそと恥骨結合の間を5等分し、恥骨から上に5分の1の所から指3本(人差し指〜薬指)分外側に取ります。
生理痛を和らげる効果があります。
2.血海
膝の皿の上の内側から、指3本分(人差し指〜薬指)上がった所に取ります。
血の流れを調整してくれます。
3.三陰交
脚の内くるぶしから指4本(人差し指〜小指)上にあります。
すねの骨と筋肉の間に取ります。
血の流れを調整する働きがあります。
③疲労タイプ(気血両虚)
疲労や睡眠不足、食生活の偏りや長引く病気などで「気血」が不足してしまい、生理痛が生じます。
- 痛みは生理後に始まり、そこまで強くはない
- 血液量は少なく、色も淡い
- 下腹部が下に下がる感覚がある
- 疲労で悪化する
- 痛みの部位をさすったり温めると楽になる
改善方法
血を補う食材を食べて、夜はなるべく早めに寝るようにしてみてください。
また、過度の疲労や睡眠不足は気血の不足を招きます。
控えるように意識してみてください。
「血」を補う代表的な食材:レバー、なつめ、プルーン、くるみ、アサリ、イカ、ホタテ、マグロなどの魚類、やまいも、にんじん、ほうれん草、小松菜などの野菜
おすすめのツボ
1.気海
おへそから指2本(人差し指と中指)下に取ります。
気の流れを調整し、下腹部の血流を良くします。
痛みを感じる事もあるので、強く押し過ぎないように注意が必要です。
2.太衝
足の甲にあり、第一指と第二指が交わる所の凹みに取ります。
気の滞りを流す働きがあります。
④のぼせタイプ(肝腎不足)
慢性的な夜更かし、加齢や長引く病気など陰が不足し、陽を制御出来なくなり起こる肩こりです。
- 張り感が強い
- 温めてもあまり変わらない
- 緊張やストレスで悪化する
- めまいや耳鳴り、目の充血など顔面部の症状もある
規則正しい生活を心がけて、睡眠はしっかりとりましょう。 改善方法
出来るだけ12時前に寝るようにしましょう。
おすすめのツボ
1.帰来
おへそと恥骨結合の間を5等分し、恥骨から上に5分の1の所から指3本(人差し指〜薬指)分外側に取ります。
生理痛を和らげる効果があります。
2.血海
膝の皿の上の内側から、指3本分(人差し指〜薬指)上がった所に取ります。
血の流れを調整してくれます。
3.三陰交
脚の内くるぶしから指4本(人差し指〜小指)上にあります。
すねの骨と筋肉の間に取ります。
血の流れを調整する働きがあります。
4.足三里
膝のお皿の下から、指4本分下(人差し指〜小指)下の、スネの骨の外側に取ります。
気を補う効果があります。
⑤水分代謝障害+熱タイプ(湿熱)
味の濃いものやアルコールの過剰摂取などが原因で体内に水分が滞り「湿」が生まれ、それが長期化する事で熱化(湿熱)して、下腹部に溜まる事で生理痛を引き起こします。
- 痛みと共に、熱感もある
- 血の色は暗く、ネバネバしている
- オリモノが多く出て、やや黄色い
- 吐き気もある
改善方法
食生活を改善させて、運動などをして体を動かすようにしてみてください。
適度な運動をして汗をかく事で、体の余計な水分を出す事が出来ます。
おすすめの食材:キャベツ、大根、たまねぎ、とうがん、白菜、きのこ類、あずき、納豆、しそ、昆布、海苔、烏龍茶、プーアル茶など
おすすめのツボ
1.帰来
おへそと恥骨結合の間を5等分し、恥骨から上に5分の1の所から指3本(人差し指〜薬指)分外側に取ります。
生理痛を和らげる効果があります。
2.血海
膝の皿の上の内側から、指3本分(人差し指〜薬指)上がった所に取ります。
血の流れを調整してくれます。
3.三陰交
脚の内くるぶしから指4本(人差し指〜小指)上にあります。
すねの骨と筋肉の間に取ります。
血の流れを調整する働きがあります。
4.陰陵泉
足の内くるぶしから、スネの骨の内側を上へ辿っていくと、指が止まる部位があります。
その部位の指一本分後ろに取ります。
体内の余計な水分を取る効果があります。
5.行間
足の親指と人差し指の付け根に取ります。
体に溜まった熱を取る効果があります。
⑥冷えタイプ(寒湿)
水分代謝がわるく、身体のなかに余分な水分が溜まって冷えている状態のタイプです。
冷たいものや、生ものなどを食べすぎたり、生理中に雨に濡れたり泳いだり、あるいは湿気の多い所に長期間住んでいたりすると、余分な湿気が下腹部に影響し、生理痛をおこします。
- 痛みだけでなく、冷たい感じもある
- 冷たいものや生ものを食べたり、冷えると痛みが悪化する
- 温めると楽になる
- 透明なオリモノが出る
など
改善方法
身体を冷やさない事が大切です。特に運動をすると①身体が温まる②汗が出て体内の余計な水分が出る為、おすすめです。生ものや冷たいものは避け、下腹部を温めるようにしましょう。
おすすめのツボ
1.帰来
おへそと恥骨結合の間を5等分し、恥骨から上に5分の1の所から指3本(人差し指〜薬指)分外側に取ります。
生理痛を和らげる効果があります。
2.血海
膝の皿の上の内側から、指3本分(人差し指〜薬指)上がった所に取ります。
血の流れを調整してくれます。
3.三陰交
脚の内くるぶしから指4本(人差し指〜小指)上にあります。
すねの骨と筋肉の間に取ります。
血の流れを調整する働きがあります。
⑦経絡の冷えタイプ(衝任虚寒・腎陽虚)
「腎の気」の不足する事で現れるタイプで、身体を温める力がなくなってしまっている状態です。下腹部を温められなくなり生理痛がおこります。
- 腰から下の冷えが強い
- 血は暗く淡い色で、オリモノの色は白い
- 疲労や房事過度により悪化
- 冷えると痛みが悪化する
- 下痢や軟便傾向
- 小便が近い
など
とにかく身体を冷やさない事が大切です。生ものや冷たいものは避け、温かいお茶やお白湯を飲んだり、身体を温める食材を取りましょう。 改善方法
お風呂などで体全体を温めるのも効果的です。
おすすめの食材・お茶:やまいも、さといも、にんじん、かぼちゃ、りんご、もち米、大豆、くるみ、生姜、鶏肉、豚肉、黒砂糖、甘酒、生姜紅茶、よもぎ茶、シナモンティーなど
おすすめのツボ
1.気海
おへそから指2本(人差し指と中指)下に取ります。
気の流れを調整し、下腹部の血流を良くします。
痛みを感じる事もあるので、強く押し過ぎないように注意が必要です。
2.関元
おへそから指2本(人差し指〜小指)下に取ります。
3.足三里
膝のお皿の下から、指4本分下(人差し指〜小指)下の、スネの骨の外側に取ります。
気を補う効果があります。
最後に
如何でしたでしょうか。
生理痛は、上記の原因が様々組み合わさって起こる場合もあります。
いずれも原因や症状で治療方針が異なります。
生理の乱れは全身のホルモンバランスの乱れにも繋がっていきますので、気になった場合は早めに専門医に相談される事をおすすめします。