「自分の感情を抑えられない」
「異常に泣いたり、笑ったりする」
「考えが混乱してまとまらない」

 

憂鬱状態となり、感情が異常に乱れて泣き笑いし、あくびを頻発するものを中医学では「臓躁(ぞうそう)」と言います。

現代医学の「ヒステリー」に当たるものです。

本病症が妊娠期間に発生するものを「妊娠臓躁」と言い、出産後に発生するものを「産後臓躁」と言います。

今回は、中医学ではヒステリーをどのように診るのかを解説します。

中医学から診た臓躁

中医学では、体を陰陽に分けて考えています。

太陽の出ている日中は「陽」の時間 → 「陽」が活発になり、活動的になる

日が落ちた夕方以降は「陰」の時間 → 「陰」が活発となり、体を休める

ヒステリーは、「陰」が身体の中で不足した状態です。

  • 長引く思い悩みや疲労などで「陰」が不足してしまう
  • 過度の興奮やストレスなどで「陽」が強くなり過ぎて、相対的に「陰」が不足してしまう時などに発症しやすいと考えられています。

 

臓躁の原因

 

憂いや考え過ぎ、悩み過ぎなど精神疲労の蓄積
暴飲暴食や疲労の蓄積
感情の抑うつ
産後や病後

 

臓躁の病因病機

臓躁のタイプ

貧血タイプ(心血不足)

長引く憂い悩みや精神疲労、肉体疲労などで心血、心陰が不足した状態です。(上図1.2)
神明は心血によって栄養されている為、心血が不足した事で神明が不安定となり、精神的にも不安定になった状態です。

貧血タイプの臓躁の特徴

  • 気持ちにムラがあり、情緒の変化が激しい
  • わけもなく悲しくなる
  • 頭がぼーっとする事が多い
  • 不安感が常にある、動悸、夢をよく見る
  • 手足の火照りやのぼせがある、寝汗がある

改善方法
過度の精神刺激を避けて、食事の摂り方を気をつけてみてください。
血や陰を養う食事をして、夜はしっかり睡眠を取る事が大切です。

気血を補うのにおすすめの食材:やまいも、とうもろこし、小麦、なつめ、かぼちゃ、きくらげ、サケ、ブリ、あさり、ホタテ、まぐろ、鶏肉、牛肉、卵、レバーなど

 

おすすめのツボ

1.神門

手首のシワの上にあり、小指側の手首の凹んだ所に取ります。

2.三陰交

脚の内くるぶしから指4本(人差し指〜小指)上にあります。
すねの骨と筋肉の間に取ります。

 

熱タイプ(心肝火旺)

感情的な抑うつやストレス、イライラなどで気が滞り、熱化した状態です。(上図3)
その熱が心に入ってしまった状態なので強めの精神症状が出てきます。

熱タイプの臓躁の特徴

  • 胸のモヤモヤが強い
  • 考えがまとまらず、混乱する
  • 言葉に脈絡がなく、感動の起伏が激しい
  • 口に苦味を感じたり、喉がよく乾く
  • 体から緊張が抜けず、熱っぽい

 icon-chevron-circle-right 改善方法
原因がストレスからきている為、趣味を満喫したり呼吸法や運動を取り入れて、ストレスを流す事が大切です。
また、アロマオイルがお好きな方は柑橘系の香りを嗅ぐとストレス解消に繋がります。

おすすめのツボ

1.神門

手首のシワの上にあり、小指側の手首の凹んだ所に取ります。

2.行間(顔や頭に熱感がある時)

足の親指と人差し指の付け根に取ります。

3.丘墟

足の外くるぶしの斜め下前部分に取ります。

 

体温調整失調タイプ(肝腎陰虚)

長引く病気や産後、加齢などにより身体の陰分が不足した状態です(上図4)
「陰」は身体を冷やしたり潤したりする働きがあるので、「陰」が不足すると相対的に「陽」が亢進して身体が熱っぽくなります。
「陽」はあくまで相対的に強いだけなので、熱感はそこまで強い感じではなく、あくまで微熱程度の発熱です。

このタイプの臓躁の特徴

  • 異常に泣いたり笑ったりする
  • あくびがよく出る
  • 胸のモヤモヤ、頭のふらつき、目のくらみや耳鳴りがある
  • 腰や膝が重だるい

 icon-chevron-circle-right 改善方法
過度の精神刺激を避けて、食事の摂り方を気をつけてみてください。
血や陰を養う食事をして、夜はしっかり睡眠を取る事が大切です。

おすすめのツボ

1.神門

手首のシワの上にあり、小指側の手首の凹んだ所に取ります。

2.太渓

足の内くるぶしとアキレス腱の間の真ん中に取ります。

3.復溜

太渓から指3本分(人差し指〜薬指)上に取ります。

 

最後に

如何でしたでしょうか。

今回は代表的な考え方の為、他のメカニズムで起きる事や、これらが合わさって起きる事もあります。

ヒステリーは、普段はなかなか見ない状態かもしれませんが、長期に渡ってストレスを受けた場合や病後・産後などに起こりやすいと言われています。

病後や産後は、気血精が過度に不足している状態ですので、しっかり睡眠を取って気血精を養う食べ物を食べて養生する事が大切です。

また、普段から良い生活習慣を作って、どんな感情も過度に溜め込まない事が大切です。

 

中医学から診た各種疾患